農家レストランという「物語」

Lifestyle―これからの未来を創る「生き方(暮らし)」とパートナーシップ

20,000人の観光客が訪れる村~宮崎県西米良村 小川作小屋村を訪ねて

宮崎県の西部、人口1,000人余りの山村に、年間20,000人もの観光客が集まる農家レストラン「小川作小屋村」があるというので、行ってみた。

レストラン情報

「小川作小屋村」の誕生物語

「小川作小屋村」がある宮崎県西米良村の小川集落は過疎が進む限界集落です。かつては林業で栄えた村ですが、1960年代の燃料革命・高度経済成長以降、急速に過疎高齢化が進み、平成6年に行われた人口の長期予測では、平成22年には村人口が748人になるとの結果が出ました。

特に小川作小屋村がある小川集落は人口減少が顕著で、平成17年には人口100人弱、高齢化率71%に達しており、集落存亡の危機が高まっていました。

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中山間地域 西米良村の風景

そこで、背水の陣で新しい企画が立ちあがりました。小川集落の文化でもあった「作小屋」を利用した「小川作小屋村構想」です。

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小川作小屋村

 小川集落には、林業や農業の休息時に使用する「作小屋」という小屋がありました。この小屋を、復元して当時「平成の桃源郷」として、再生しようとする構想です。行政と地域協議会がなんども話し合いを重ね、「農村と都市の交流の場」「地域経営拠点」「都市住民の体験工房の場」地域再生拠点構想が始まりました。

 この作小屋を起動に載せるために、小川地区では計96回にもわたる地域協議会が開かれ「この地域をどうしても残したい。どのようにすれば残せるか。」という地域住民の想いを一つにまとめていく場が設けられました。

 話し合いで大切にされたポイントは次のようなものです。

一つには、景観を統一させること、二つには地域の郷土料理を目玉にすること、三つには、女性の意見を活かすこと、です。

 郷土料理の提供者としては地域の婦人会の女性たちが選ばれ、地元で採れた食材を活用した小川の味を楽しむお食事処(小川四季御前)が誕生しました。平成21年のことです。

小川作小屋村の伝統料理

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小川作小屋村の伝統料理―小川四季御前

 目玉料理は、16皿に1品ずつ並べた郷土料理です。すべて地元の婦人会で鍛えた農家のお母さん方の手作りです。写真のメニューは芋と椎茸の煮しめ、おからサラダ、小川豆腐、おから天、梅ゼリー、鹿の甘酢和え、椎茸天ぷら、わらび、こんにゃく、タケノコの煮しめ、カラーピーマンの油炒め、栗の渋皮煮など。

同じ敷地内には宿泊施設のバンガローもあります。

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バンガローの内観

1泊素泊まり2,500円、夕食付きで4,400円で何とも豪華な空間です。ゆったりとした山村で、家族や大切な人と水いらずの時間を過ごしてはどうでしょうか

 

 

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料理を作っているお母さんの笑顔
 そして、料理を作っているお母さん方の平均年齢は70歳。一日130食を作ることもあるそう。料理の腕前は、地域の法事などの行事の食事を一手に担ってきた婦人会で鍛えています。ただ一つ、今の作小屋村が抱える課題は、お母さんたちの食文化を継承する若い担い手が不足していることです。長い年月を経て育まれてきた郷土料理、継承するのはそう簡単ではないそうです。

お店の周りは、四季の変化に伴って変わる山々が「桃源郷」として美しい。ぜひ、一度「令和の桃源郷に訪れて、山村の魅力を感じ取ってみてください。

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四季にともない変化する山々